Kars Kilim

東部アナトリアの国境に近い町、カースのオールドキリムです。
有史以来さまざまな勢力のぶつかり合いが絶えない地域だったカースのキリムは
隣接するコーカサス地方の影響を多く受けているといわれます。
とくに花模様の一部に織り込まれているピンクの色合いに、それが見受けられるような気がします。

カースのオールドキリムには共通して、なんともこなれた織り地の柔らかさを感じます。
馴れることでほどよいくたりとした柔らかさとドレープ性が生まれるオールドキリムがありますが、まさにそれです。
床にしなだれかかるように馴染んでくれるこの感触は、オールドキリム独特の、楽しんでいただきたい魅力の一つです。

柄は、完全なる幾何学模様というよりは少し写実的になって、絵画のようです。
もちろん、ぶどうの木のようなモチーフや花のモチーフには、繁栄への願いや夢の楽園を表す意味がありますが
何かへの祈りや願いを制限の中でこのキリムに閉じ込めた、というよりは、
美しいものや素敵なものを少し自由に表現したような、ゆったりとした美しさがあります。

応接室やリビングのソファセット、少し重厚な欧風の食卓の床などに、華やぎとシックな落ち着きを与えてくれそうです。