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キリムの文様

 

キリムの文様は、遊牧民の生活の身近にあった自然や動物などをモチーフに、幾何学的にデザインされたものが殆どです。
母から娘へと代々受け継がれてきたこれらの文様には、家族の安全、豊穣、魔除け等様々な意味があり、
そこにはまた、それを織った女性の気持ち、喜びや哀しみ、愛情、嫉妬等の思いも込められています。
代表的な文様とその意味をいくつかご紹介します。
解釈は決してひとつではなく、また各家々で違ってくることもありますが、
単にキリムを眺めるだけでなく、そこに込められた女性たちの想いに想像を巡らせてみてください。


‐ミフラーブ 
イスラム寺院にあるアーチ状のくぼみの事。
礼拝用のキリムにはこの文様のあるものがよく使われます。
凸模様をメッカの方向に向けます。
単純なアーチ状のものから、階段状のものまで様々。

‐エリベリンデ(地母神)
女性の胸と腰を強調したデザイン。
女神像、豊穣、多産の願いが込められている。
イスラム以前の地母神信仰に基づくもの。

‐花
乾燥した高原に住む農民や遊牧民にとって、花の咲く庭園はイスラムの楽園。
花を中心にして葉をあしらった文様はヘラティという。

‐星
幸せ、豊穣を表す。
基本形の6角はソロモン王の印といわれる。
8・12角など様々なパターンがある。

‐ギュル
トルクメニスタン、イラン東北部、アフガニスタン北部に住むトルクメン族の織物に多く見られる。
部族・家柄を示す紋章の役割をする。

‐ボテ
松笠、梨、ザクロ等の果物、花や葉など様々な説がある。
イランの代表的な文様。ヨーロッパに渡り、ペイズリーと呼ばれる様に。

‐生命の木
樹木は不滅の繁栄、永遠の命を表す。
また歩んで欲しい人生が枝葉に表現されていることも。

‐目
魔除けの意味がある。
邪視、邪悪な考えから身を守るといわれ、
目を抽象化したダイヤ形や三角形は、外部からの危険な力を弱めてくれると信じられている。

‐櫛・指
原形は5本線。5本の指から変化したもの。
邪悪なものから身を守るという意味。
また櫛は誕生や結婚を意味する。

‐髪飾り・耳飾り
結婚への憧れ、良縁の願いが込められている。

‐羊の角
遊牧民にとって羊は財産そのもの。
その角は、男性の力や能力を表し、繁栄や豊穣、力を意味する。
パターンは150種以上あるといわてる。

‐狼・狼の口 
遊牧生活にとって、狼は最も怖い存在。
家畜が襲われないようにとの願いが込められている。
また邪視から身を守る意味もある。

‐動物
遊牧民にとってとても身近な存在の家畜等に対する愛情、繁栄や生活の安定を表す。

‐ゴラゴン
ゴラゴンは空気と水を司る想像上の生物。
宝や女性を守る。
また豊穣の意味もある。

‐陰陽
光と陰、太陽と月を表すことから転じて、男性と女性を表す。
愛の象徴。夫婦の絆。

‐足枷
家畜をつなぐ足枷の文様。
夫婦や家族の絆の象徴。

‐ガチョウの足
つがいで添い遂げるガチョウの足は、夫婦仲良くいつまでも...という願いが込められている。 

‐イガイガのある実 
洋服になどくっつくイガイガのある実には、魔除けの効果があると信じられている。 

‐ 鳥
鳥の文様には色々な意味がある。
幸せを運んでくると信じられ、幸福、楽しみ、愛の象徴。また自由も表す。

‐蛇
豊穣、多産、幸福の象徴。防衛の意もある。

‐サソリ
猛毒を持つサソリを文様に取り入れその力を得る。
また自己防衛の意味。

‐フック
S字形がよく使われる。
鍵をかけ邪悪なものを入れない、または閉じ込めるという意味。

‐箪笥
若い女性の結婚への願望や、幸せな結婚生活への夢を表現したもの。
またそこには子宝・金運に恵まれるようにとの願いも込められている。

‐流れる水
水は命の源。
川の流れのように幸せや命が続くようにとの願いが込められている。
水差しのモチーフもある。

‐ムスカ
女性が身に着けていた魔除けの護符をかたどったもの。
耳飾りのモチーフのひとつ。