Aydin アイヂンアンティークキリム K23407

コレクションピースは、特にどの品物も芸術的・技巧的に優れて素晴らしいことはいうまでもないのですが、このキリムをみると、本当に気が遠くなるような気持ちになります。
100年以上前に、どうしてこんなに豊かなものを創りだすことができたのでしょうか。どんな気持ちで。
決して商業的な、売るための「作品」ではなく、生活の消耗品というだけではなく、愛や情熱や、思いといった、魂「スピリット」の力がなければ完成しえないものです。
〈118㎝×161㎝〉という二次元の「面」にくり広げられた世界は、このキリムの実体すべての、ほんの氷山の一角でしかないのでしょう。それを目で見て、手で触れて、傍に置いて感じるのが、キリムをもつということの最高の味わい方であると思います。

このキリムは100年以上になると思われるアイドゥンのアンティークキリムです。
西部アナトリアの、エーゲ海に近い地域にあり、フィールドに無地の部分が少なく、すべての隙間を埋めるように模様が入っているのが特徴です。
このキリムにも、フィールドを埋め尽くすように賑やかに模様が織り込まれています。さらに一つ一つの模様の内側も、それぞれに違う色で織り分けられており、カラフルなのに全体の調和が素晴らしくとれています。
この調和した感じは、写真で見るよりも実物をご覧いただいたほうが、ずっと明確です。素晴らしい作品です。ぜひ足を運んで実際に見ていただきたい一品です。
強い色も使われていますが、全体にはアプリコットのような心地よい、きれいな色調で、全体が非常に美しくまとまっています。この若々しい配色も非常に珍しいものです。
外ボーダーには地母神、中央にはミフラーブ（礼拝アーチ）が配され、イスラム教のお祈り用のマットとして織られたものです。
祈りをささげるという、特別な時間のためのキリムは、やはり、織り手にとっても特別な一枚だったのでしょう。