Mut Cecim K23145

中央アナトリアの南に位置するタウロス山脈の麓、ムット（ムーツ・ムッツ）の遊牧民たちによるセミオールドのジジムです。
ムットは標高が高く、染料となる植物などに乏しい地域です。キリム織りには未染のウールの糸が多く使われ、染め糸の色数もあまり豊富でないことが多いのですが、こちらは見事な色彩です。
美しい発色の糸で、丁寧にしっかり織り込まれた美しいジジムの柄。その持ち主にとっても貴重な一枚だったのではないでしょうか。よく使い込まれた跡が、愛着を物語っています。
せっかくの色彩を、よりカラフルに見せるために、細かい部分を縞に織ってゆくなど、色の見せ方、織り方にも工夫が見られます。地織りの濃い茶色は未染のウールで、ジジムにもベージュやグレーなど、ウールそのままの色を紡いだ糸が活かされていますが、それを感じさせないほど、染め色と同じにキリムを彩る一色となっています。
くっきりと浮き立つように織られたジジムは立体感と重厚感があり、使い込まれた部分はオールドらしい味わいも醸し出しています。