Bayburt

アナトリア北東部、バイブルトのアンティークキリムです。
とても美しいミフラーブ文様の礼拝用マットです。やや太めの糸で織られていて、織り目はそろって美しく、色合いの感じも手伝って、織り地にはふんわりとやわらかな印象があります。
その色合いは、黄色やアプリコットを中心とした、春のように穏やかで優しい色調です。赤みのない、マイルドなモカブラウンの縁どりもやさしく、またところどころに巧みに配されたパープルが美しく効いていて、全体を夢のような世界にみちびきます。
太いボーダーの、縦に流れるようなデザインには小川のせせらぎのようなゆるやかな動きを感じることができます。その内側の花柄のボーダーと合わさった印象は、春の温かい雨のようです。
ミフラーブの中の色は、ウールそのものの質感を活かしたやわらかな色合い。その自然なアブラッシュも、とても豊かな表情をもっています。
ミフラーブ模様のデザインされた礼拝用のマットには、さまざまなものがありますが、どれも織り手にとって通常よりも糸や織りや染めの質も高めた、特別な一枚であることは確か。しかし、おごそかでかしこまった気持ち、背筋がピンと伸びるような、引き締まった気持ち、荘厳な気持ちなど、思いがキリムの色や印象に現れるような気がします。このキリムには、完全なる信頼と、天国を夢見るような思いが、織り込まれているのではないでしょうか。
近隣のエルズルムは礼拝用キリムで有名な土地ですが、カジズマンのキリムで礼拝用のものは、現在ではなかなか見つけられず、とても貴重なピースです。また、この町の古いキリムには、濃い赤を中心とした暗めの色が多いのですが、そんな中、幸せにあふれたこのような色調もとてもめずらしいものです。
キリムの美しさももちろん素晴らしいのですが、希少価値も非常に高い一枚です。