カーペットの材料は主に羊毛です。縦糸は木綿が主力です。パイル糸には、羊毛以外に絹や木綿、麻なども使いますが、絹は繊維が弱いため長持ちしません。壁や家具にかけるなど、用途を限ってお使いください。
機に縦糸を張り、そこに連続して結び目(ノット)を作り、一段終わったら一方から片方の端まで横糸を入れ、叩き込むようにしてその段を締めます。こうして出来上がった、ある程度の厚みを持った織地を、パイルと言います。
模様はグリッドを書き込んだ型紙のようなものを見ながら織りますが、熟練した人たちはそれなしで自在に作業します。他に同じものがない理由の一つはここにあります。結び目に使ういろいろな色糸は、同じ型紙によって糸量を決め、あらかじめ染めておきます。
化学染料ができた19世紀中頃以前は、すべてが天然染め(植物、動物、鉱物)でした。
トルコ、イラン、コーカサス、中央アジアに広がる、農耕に適さない過酷な乾燥地帯が主産地でした。厳しい気候の中でヤギや羊を飼い、水を求めて移動することで成り立つ、遊牧民の生活の中で生まれたものです。このエリアは、カーペットベルトと呼ばれてきました。全体がイスラム文化圏であることから、イスラムカーペットという呼び方もここから生まれました。
主に室内に敷きます。壁掛けにしたり、家具にかけたりもします。靴を履いたまま生活する国では、カーペットも外と同じように靴で踏みます。羊毛には、それに耐えられる強さがあります。
アメリカではカーペット(carpet)、イギリスではラグ(rug)を使うようです。オリエンタルラグ、イスラムカーペットは、そもそもの産地に由来した言葉です。日本語の絨毯(じゅうたん)には「毛をむしる」というような意味があるそうです。中国語では段通(だんつう)です。
ロシアのサンクトペテルスブルクにあるエルミタージュ博物館で、今から二千年以上前の、2枚のカーペットを見ることができます。寒い地方の永久凍土の中に封じ込められていたために、劣化が進まずに残ったそうです。
カーペットの繊維を少しほぐして、カーボンテストをする専門の会社に渡すと、鑑定結果が文書で届きます。国内にもそれをやる会社があるので、ご紹介します。有料です。
数千年前のカーペットが現存し、見ることができるのです。色も織地も残った状態で。そこから多くが学べます。機械化によって大量生産を可能にした現代、伝統と歴史に根ざした技術の復刻は、新しいカーペットの質を高めるでしょう。
残り少ないアンティークものを追い求めるだけでなく、21世紀のアンティークと呼ばれるものを作る。私たちが伝統と歴史にこだわる理由はここにあります。
日本でよく知られた自然染め(vegitabul dye)は植物由来が主なので、色合いは淡く、退色しやすいです。カーペットで使う染めは、靴で踏まれ、何百年も色落ちしないことを求められるので、植物だけでなく、動物、鉱物などにも素材を求めます。日本の伝統的な「植物染め」とは違うという意味で、天然染め(natural dye)という言葉を使っています。
私たちの東京でのショップ名は「青山キリムハウス」です。カーペットとキリムは違います。結び目を作って織るカーペットは厚みが確保され、カーペットベルトから始まって世界中に流通した商品です。
キリムは、縦糸と横糸が交互に交差する、平らな織物です。主にトルコの遊牧民の家庭で作られてきました。トルコを出自とする私たちは、自分たちをアイデンティファイする気持ちで、店名を「キリムハウス」にしてスタートしました。
結び目(ノット)を作る時に、一回からげるのがペルシャ結び、二回からげるのがトルコ結びです。ペルシャ結びは、細かな図柄を織り上げることができる一方、トルコ結びは大胆な幾何学模様を作り出しているという特徴があります。
ペルシャとトルコという、それぞれ歴史に残る大帝國で培ってきた文化の特性がバックグアウンドにあると考えての違いなら理解しやすいでしょうか。