Aydin アイヂンアンティークキリム K23034

西部アナトリア、エーゲ海に近いアイドウンのアンティークキリムです。
色も、織りも、とても美しいスペシャルなピースです。特に貴重な、この深い緑は、青みがかかったシーグリーン。深い海の底のような、類いまれなる美しい染め色です。
そのグリーンを際立てる、明るく強いオレンジも、素晴らしい色です。強くて明るい色なのに、じわっとした馴染みがあります。深く染まったえんじ、濃紺、赤ワインのようなミフラーブの色もそれぞれに最高の染めが行われています。少量使われた白や、点在する淡い黄色や草色も、全体のコントラストをよりよく見せる絶妙な色彩感覚をもって配色されています。
天然の草木染めで、しかもアンティーク。色のもちの状態の良さと、育ち具合のバランスが非常によいことがわかります。ここから、さらにアンティークとして長く生き、これらの色はまた美しさを保ちながら、違った味わいを醸し出す色合いに育ち、その価値を高めてゆくことでしょう。
アイドゥンのキリムは、その多様性あるデザインがコンヤのものと似ていてよく比較されますが、デザインが凝っていて、このようにぎっしりと隙間なく模様が織り込まれています。アイドゥンの明るく豊かな気候や土地柄の生む、あでやかな美しさが、この明るく多彩なキリムにも表れているようです。
その中でもミフラーブ模様を配した礼拝用のマットは、やはり特別なもの。織り手にとっては、織りの技術も、糸の質や撚り、染色も、すべてにおいて最高のものを揃え、もっとも「気合いの入った」一枚だったのではないかと思われます。そのくらいに作品として素晴らしく、クオリティの高いピースです。質の高さは言うまでもなく、その「気合い」のようなもの、思いも、この小さな平面に表れ、人の心を動かすのがキリムです。
思いあればこそ、この質の高さを生み、今に価値を生んでいるのです。