オールドキリム

トルコ　セルジュク王朝の古都でもあるカイセリのアンティークキリム。２００年位になるものです。
カイセリでは絨毯でも有名で、そのイメージをお持ちの方も多いと思いますが、このように素晴らしいキリムも織られてきました。

カイセリのキリムは、比較的あらい糸でゆるく織られているのが特徴ですが、こちらのキリムもやはり、柔らかいウールで太めに撚った糸が使われています。織りも、かたく目が詰まったキリムのイメージとは少しちがい、ほわっとやわらかい手触りです。

このキリムの素晴らしい点は、なんといっても、色彩の美しさです。
秋を模したような、赤や茶に少量の黄色、鈍い白などの色使いが多いカイセリのキリム。このような目を惹く配色はなかなか目にすることができません。ダークな色の組み合わせでありながら、あざやかな美しさを持っています。コンディションが大変よく保たれ、長い年月を経ても染めの美しさが生き続けています。
メダリオンのはっきりとした白い部分は、コットンです。この白が実によく効いていて、色彩の美しさをを引き立てています。
よく見ると、上下のボーダー、左右のボーダーにも白っぽい色が使われていますが、こちらはウールで、浮き立たず全体に溶け合ってなじんでいます。この部分までがメダリオンと同じ白だったら、どうだったでしょうか。はっきりしすぎてうるさい印象だったかもしれません。織り手がそこまで計算していたのか、縁という構造上の理由か、材料の糸の量が限られていたのか、それともそんなこと全く意識していなかったのか・・・それは今となっては誰にもわかりません。しかしこの落ち着いた色と、鮮やかさのバランスが本当に美しいと思います。
また、グリーンもこのキリムの個性的なところ。青味のかかった、とても美しいグリーンです。手染めのため糸の色に濃淡があり、それが織られて面になると、ツイードのように表情豊かになります。
このグリーンの希少性は言うまでもありませんが、それ以上に、はるか昔の遊牧の地に、このような色彩センスをもった女性が存在したことに、感嘆するばかりです。
柄の幾何学模様も、機械で製図したような完璧さではなく、本当にフリーハンドで織られたことがわかります。ほほえましく、温かみを感じます。
人の手と、自然の力に委ねられた有機的な美しさです。

カイセリキリムには大きなサイズのものが多く、このような小型のサイズはとても珍しく、貴重な一枚です。
そのほとんどが二片以上を接いで作られていて、こちらも中央から二枚はぎになっています。
特に日本ではラグや壁掛けのインテリアとしても大変好まれるサイズ。このサイズのカイセリを見つけることはなかなか難しいでしょう。